司法修習生Higeb’s blog

68期司法修習生によるブログです。法律の勉強法・基本書・参考書などの司法試験ネタや勉強ネタを中心に書いていきます。

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司法試験で執行・保全法を学ぶ意味(基本書・参考書)

民事執行法保全法は司法試験の論文式試験で直接問われることはありません。また、短答式試験民訴の廃止にともない、短答でも直接問われることはなくなりました。
 
しかし、民事執行法保全法の基礎を学ぶことは司法試験にとても役に立ちます。ローで開講されている場合は、受講されることをお勧めします。
 
第1に、民訴の理解に非常に役に立つことが挙げられます。民訴は司法試験で発展的論点を現場で考えることが要求される科目です。そして、民訴の深い理解は「既判力に始まり、既判力に終わる」と言っても過言ではありません。
そして、既判力の理解のためには、既判力と執行力を截然と分けて学ぶことが非常に大事です。例えば、既判力の主観的効力に関する民訴115条1項3号所定の口頭弁論終結後の承継人の範囲についての実質説と形式説の対立は中々難しい論点です。しかし、承継人がいつ、どのような手続きで権利主張をするか?という問題にとらえ直せば、既判力ではなく、執行力の問題として、かなりすっきり理解ができます(ちなみに、実務の扱いは受験生にとっては意外かもしれません。)。
 
第2に、民法担保物権の理解が深まることが挙げられます。民法担保物権は債権総論と並んで迷子になる人が多い分野です。その理由の1つが論点について具体的場面を想定しにくいことにあります。担保物権で問題になる場面とはほとんどが執行段階で生じる不都合に関するものです。担保執行の基礎を知っておくことで、具体的場面をイメージでき、担保物権の、更にそれに連なる民法全体の理解が容易になり、また、深まります。
 

以上のことから、司法試験受験生が民事執行法保全法を学ぶには、①実務での具体的場面をイメージしやすく、②他教科の勉強に差し支えない程度のボリュームの本を選ぶ必要があります。

 
司法試験受験生に1番人気があるのは、和田吉弘「 」だと思います。確かに、わかりやすく、非常にコンパクトです。ただ、コンパクト過ぎるため、実務で起こる問題をイメージするのは難しいです。
逆に、実務との架橋を目指すのが、平野哲郎「実践民事執行法民事保全法 第2版 」です。修習生や若手弁護士に人気です。書式例も豊富で実務の扱いや問題もしっかりと書いてあり、実務を知りつつ学べます。ただ、600ページを越える大部なもので、現状の司法試験の勉強に使うのはやや躊躇します。
 
私のお勧めは、藤田広美「民事執行・保全です。執行•保全でどのような問題が生じ、それを解釈•運用でどう対処し、場合によって立法がなされた経緯など、実務を思い浮かべることができます。また、藤田先生の「講義 民事訴訟 第3版 」「解析 民事訴訟 第2版 」とのリファがなされており、民訴の論点との関わりにも十分に配慮があり、担保物権判例も執行・保全法に則して説明してあります。量も簡潔ながら理解のためには必要なボリュームが確保され、丁度よいです。
 

 





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