択一試験が不合格だった人は緊急の対応が必要です。
択一試験に合格できないと言うことは、基本的知識や基本的制度の最低限の理解が出来ていないことを意味するからです。
そのため、答案の練習以前に「基本書をしっかり読む」というところから、やり直す必要があります。
また、
憲・民・刑がそのレベルであれば、他教科も同様の可能性が高く同じように緊急対応すべきです。
司法試験の択一過去問では、答案を書く前提知識が問われています。択一試験が無くなった科目についても、択一過去問は全問検討し、理解・暗記すべきです。
まず、改めて基本書を通読すべきです。しかも、発展的な本を使っていた人は、基本事項を説明してある本に変更すべきです。知識や理解を基本事項に集中させるためです。
その後に、択一過去問を解いていくことになります。この際は、答えがわかったか否かにかかわらず、全問条文をチェックし、基本書の該当箇所を読みましょう。教科書は該当記述だけでなく、少なくとも最下層目次分は丸ごと読みましょう。ローで2〜3年学んで択一に不合格になるということは、「わかったつもり」でわかっていない知識がかなりあると考えられるからです。
なお、択一を解いて
「正解した」とは理由付け、条文、判例すべてが頭に入っており、理解できている状態を指します。「答えは分かった」「はっきりではないが、覚えていたことから答えがわかった」「暗記していたからわかった」は不正解と同義です。択一で問われている知識はそれくらい基礎的で重要だということを認識しましょう。
以上のことを論文試験の発表日である日まで繰り返しましょう。その間は論文の勉強・発展的な本を読むなどほかの勉強は一切せず、上記の地道な勉強(作業といってもいい)に集中しましょう。
なお、上記は択一に合格しても順位が3000番を超える人にも基本的にはあてはまります。
以下、科目ごとの留意点を書きます。
択一で点を取れないということは、芦部・
憲法を理解する以前に書いてある知識を表面的にも読めていない可能性があります。もちろん、
小山・作法 や
駒村・憲法訴訟 等を読むレベルにも無いと思います。
芦部・
憲法を2,3度通読した上で、択一過去問を解いては芦部・
憲法の該当箇所を最下層目次単位で読む、ということを繰り返しましょう。
また、条文を毎回引くのはもちろん、声に出して読むなど、条文に意識が向くよう工夫しましょう。
民法は、
山本・総則 、
同・契約 や
中田・債総 、
潮見・プラクティス 等、
詳細・発展的な本を使っている人は、それを一旦封印しましょう。択一に不合格の状態・レベルでそれらを読んでも理解は出来ないばかりか、基本的事項への意識が疎かになる等、弊害が大きいからです。
その視点から改めてお薦めの基本書を挙げると、
です。
民法も
1度は通読し直しましょう。択一が出来ないと言うことは、知識量が足りない上、理解がバラバラである可能性があるので、体系を再度頭に入れるためです。
その際に条文を毎回引くことは極めて重要です。この作業をバカにすると択一の合格は不可能です。
その後は択一の問題を解いては、条文・教科書最下層目次をチェックすることを繰り返します。
刑法
刑法も基本書の通読は必須です。択一に不合格になるということは、刑法の基本理念や体系の理解・暗記が甘い可能性が高いからです。
しかし、西田典之「刑法総論 第2版( 」「刑法各論 第6版 」、山口厚「刑法総論 第2版 」「刑法各論 第2版 」、高橋則夫「刑法総論 」「刑法各論 」、井田良「講義刑法学・総論 」等を使っている人で択一刑法の科目別順位が3000番より下の人は、一度コンパクトな本をしっかり読み込んで頭の中に刑法の構造を叩き込むことを薦めます。この視点からは、
山口厚「刑法 第3版 」
井田良「入門刑法学・総論 」「入門刑法学・各論 」
のどちらかを使うといいと思います。
上記を3回位通読した後に、本来の基本書を3回位通読しましょう。
その上で択一過去問を解いては、条文をチェックし、基本書の該当最下層目次を丸ごと読む、ということを何度も繰り返しましょう。
行政法は、他の基本書を使っている人も、櫻井・橋本「行政法 第4版 」を通読しましょう。行政法の全体像を把握するためです。
教科書に出てくる条文は、個別法であってもちゃんとチェックし、どの要件が問題となっているかを確認しましょう。
行訴法、行手法については、声に出して読むなどの工夫をして要件を頭に叩き込みましょう。
その後は択一過去問を解いては、条文と該当のサクハシ最下層目次を丸ごと読む、ことを繰り返しましょう。
会社法は基本的な条文の理解が最優先です。膨大な条文があるため、どの条文もちゃんと理解できてない、ということが多いからです。
そこで敢えて、岡口基一「要件事実マニュアル 第3巻(第4版) 商事・保険・手形・執行・破産・知的財産 」の会社訴訟部分の通読を先行させることをお薦めします。訴訟類型から訴訟要件、実体要件の要件事実を確認することで、会社法の重要条文を読み込むことができるからです。
その後、伊藤・大杉ほか「会社法 第3版 (LEGAL QUEST) 」を通読して会社法の全体像を頭に入れます。この際も条文はしつこいくらいに六法を引きましょう。通読は2,3回繰り返すべきです。
その後、択一過去問を解いては、条文をチェックし、リークエの該当最下層目次を丸ごと読む、ということを何度も繰り返しましょう。特に、会社法は条文を探すことが論文でも大事なので、条文チェックはしつこいくらいやりましょう。
刑訴法
刑訴法の基本書を、
上口裕「刑事訴訟法 」や
安冨潔「刑事訴訟法講義 第3版 」などの比較的詳細な基本書を使っている人は、1度
三井・酒巻「入門刑事手続法 第6版 」に戻りましょう。刑訴法は枝葉末節にとらわれて全体像の把握ができないままに論文の勉強に突入してしまっている人が多いからです。
同書を2,3度読んでから改めて自分が使用している基本書を2度くらい通読しましょう。
なお、基本書に悩みがある人には、
酒巻匡「基本講座・刑事手続法を学ぶ(1)〜(26・完)」(いわゆる酒巻・新連載)(法学教室連載/355号〜394号)をお薦めします。
その上で、択一過去問を解いては、条文をチェックし、基本書の該当最下層目次を丸ごと読む、ということを何度も繰り返しましょう。特に、刑訴法は条文題名が無く、本番で条文探しに時間をとられることがあるので、条文のチェックはしつこいくらいしましょう。