司法修習生Higeb’s blog

68期司法修習生によるブログです。法律の勉強法・基本書・参考書などの司法試験ネタや勉強ネタを中心に書いていきます。

にほんブログ村 資格ブログ 司法試験へ

所得税法の学び方(基本書・副読本・参考書)

租税法は難しいイメージがあるため、選択する人が少ない科目です。しかし、租税法律主義があるため、答案は要件事実を特定→事実をあてはめる、というに尽きます(膨大な間接事実から要件事実を認定するタイプの問題が多く刑事系と似ています)。また、規範定立は条文文言と趣旨からの説き起こし、というパターンです。実は学びやすく、答案も書きやすい科目です。

 
試験範囲は所得税法法人税法国税通則法の基本部分です。そして、法人税法も所得課税部分からの出題で、国税通則法も所得課税付随部分からの出題が予想されます。従って、所得税法の理解をしっかりさせることが非常に重要です。
 
勉強はまず、木山泰嗣「弁護士が教える分かりやすい「所得税法」の授業 (光文社新書) 」を読み込むことから始めましょう。租税法の勉強は①所得、担税力、譲渡所得課税の趣旨、といった基本概念を理解し、②そこからの説き起こしで各条文を熟読し、③その発現である判例の規範を理解し暗記する、ことが大事です。木山・所得税法は本来は一般向けの新書であり、ボリュームも少ないにもかかわらず、概念・趣旨・条文・判例が非常に分かりやすく、かつ、司法試験に十分といっていい程のレベルで書かれています。
入門向けであると同時に司法試験に何とか立ち向かえるレベルまで達することが可能な非常に有益な本です。まずはこの本をしっかり読みましょう。
 
選択科目にはあまり時間をかけられない反面、足切りは怖く、また、本試験の初日の最初の科目で、出来が悪いとメンタルで引きずってしまう怖さもあります。そのため、ある程度は安心して受験できる力が欲しいところです。
また、租税法は一見馴染みの薄い制度が出題されることが多く(但し、よく考えれば基本概念・趣旨から考えれば解ける問題)、また、所得税法の理解が法人税法国税通則法の基礎であることから、もう少し応用的な本を読んだ方がいいと思います。
 
そのために読む本の候補は3つあります。どれか1つ読めば十分です。
 
1つ目の候補は、佐藤英明「スタンダード所得税法 補正3版です。所得税法の基本概念を非常に深く掘り下げ、応用的な制度・論点の説明・理解につなげて記述されています。この本に取り組むことで、所得税法だけでなく、所得課税全体の理解や国税通則法の前提が理解できるので、所得課税の基礎として所得税法を深く理解する目的には最も適しています。
但し、いい意味ですがメリハリが効いた記述であるため、様々な制度・論点を広くカバーしてはいません。広く薄く知っておくことで本試験で面食らわないようにする、という目的には不向きです。
 
2つ目の候補は、谷口勢津男「税法基本講義 第4版です。条文に沿って解釈論が展開される手堅い記述です。やや難しく、平板な説明なのが難点ですが、①ほぼ全ての制度に触れられていること、②課税要件事実を意識して判例を主要事実・間接事実と整理して記述してあり、思考も答案も整理されやすいこと、③国税通則法についてはこの本以外に選択肢がなく、租税法という科目全体を一体として理解できること、など利点も多い本です。私はこの本がメインでした。
 
3つ目の候補は、三木・中村ほか「演習ノート租税法です。短文問題に解説が付されており、論点本に近いイメージです。論点の析出が非常に司法試験に近く、また、説明も基礎から説き起こして、わかりやすく、詳細です。また、網羅性もあります。実践的な本と言えると思います。
 
繰り返しますが、①あまり時間をかけられないこと、②まず、木山・所得税法を熟読すること、に留意しましょう。
 
 
 







にほんブログ村 資格ブログ 司法試験へ