司法修習生Higeb’s blog

68期司法修習生によるブログです。法律の勉強法・基本書・参考書などの司法試験ネタや勉強ネタを中心に書いていきます。

にほんブログ村 資格ブログ 司法試験へ

会社法判例と要件事実の学び方(参考書・判例集)

会社法には要件事実は必要ない、という人もいますが、①要件・論点相互の関係がわかり、②答案が読みやすくなるという会社法特有の効用が大きく、是非とも要件事実を意識した学習をお薦めします(そもそも長文の事案処理が出題される司法試験では、要件事実→事実のあてはめが必須の思考法であり、事実や論点を落とさない等の科目共通の効用があるのは言うまでもありません)。

第1の効用である、要件・論点相互の関係がわかる、というのは、会社法は要件・論点相互の関係がやや難しいため、要件の意味を間違ってしまいがちで、主な失点となるため、重視すべきです。
例えば、429条所定の故意・過失は「何についての」故意・過失かをパッと言えるかを考えると分かりやすいと思います。法定責任説→任務懈怠についての故意・過失という流れがスッと出てこない人がそれなりに多い基本論点です。
また、新株発行差止請求における210条2号所定の「著しく不公正な方法」の判断構造=主要目的ルール(通常は「会社の経営上の支配権を維持しようとする目的が、資金調達の目的よりも優越し、前者が主要な目的と認められる場合に、著しく不公正な方法による新株発行とする」ことをいう)を具体的に=答案で書けるように言えない人も結構います。「著しく不公正な方法」は評価規範なので、評価根拠事実が請求原因、評価障害事実が抗弁になります。つまり、主要目的ルールは、評価根拠事実たる取締役による経営支配力の維持・獲得目的の存在(評価根拠事実たる請求原因の成立)を前提に、評価障害事実たる資金調達目的の存在が評価根拠事実を覆す(=抗弁が成立する)か?という判断構造であり、ただの総合考慮ではないことは要件事実を意識すると分かりやすく、以後間違いません。

第2の、答案が読みやすくなる点も、分かりやすく試験委員に読んでもらってはじめて点が付く以上、バカにすべきではありません。
特に会社法は前述の主要目的ルール、423条、429条の「任務懈怠」など、答案に事実をごちゃごちゃと未整理のまま書いてしまいがちな科目です。更に論点まで混ぜて書いてしまい、非常に読みにくくなりがちなので、注意が必要です。
要件事実を意識して書くと、主要目的ルールなら評価根拠事実と評価障害事実に自然と分かれますし、任務懈怠なら①あるべき姿・②実際の行為・③①と②が乖離するという評価、に截然と分かれるので、読みやすくなります。。

但し、会社法要件事実に多くの時間を割く必要は全くありません。民法の要件事実をしっかりやっておけば会社法の要件事実はだいたい分かります。「だいたいこんな感じ」ということが頭に入っておけば司法試験受験生としては十分です。大事なのは「会社法を要件事実的に考える」という構え、と言ってもいいと思います。

具体的な勉強法は、百選潰しに、大江忠「要件事実会社法〈1〉第1編総則(第1条~第24条)・第2編株式会社(第25条~第294条) 」「要件事実会社法〈2〉第2編 株式会社―第295条‐第574条 」「要件事実会社法(3) 」を併用することが最も分かりやすく、効率的です。
百選に取り組む際、まず、①「要件事実会社法」の各巻末尾にある判例索引を調べる→該当ページを見ると当該判例の攻撃防御方法・要件事実(主要事実)がそのまま書いてあるので、百選の事案の概要で補完しつつ、事案を要件事実に沿って把握します。次に、②「要件事実会社法」には、百選の「判旨」がどの要件事実に関するもの(つまり論点)かを明示してあるので、要件事実と判旨を結びつけて把握します。これで 事案と判旨の確認という判例学習と要件事実学習の両方出来ることになります。
ポイントは「要件事実会社法」を使って、なるべく手間と時間をかけないということです。

なお、「要件事実会社法」は非常に高価な上に、実際に読む部分はわずかなので、使うときだけローの図書館で借りれば十分だと思います。




l

にほんブログ村 資格ブログ 司法試験へ