司法修習生Higeb’s blog

68期司法修習生によるブログです。法律の勉強法・基本書・参考書などの司法試験ネタや勉強ネタを中心に書いていきます。

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民訴法で躓いた人の勉強法

司法試験では民訴法は独立の科目である上、民法の出題は紛争=民事訴訟を前提としており、会社法も会社訴訟=民事訴訟を前提とし、憲法行政法も具体的出題は行政訴訟の場面が多く、行訴法7条により基本的に民訴法に定める手続によることから公法系・民事系に全て関わる重要科目です。更に手続思考の基礎であることから、刑訴法(刑訴を通じた刑法も)との相互理解の重要性も見逃せません。

私は、「民事訴訟法を制する者は司法試験を制する」と考えています。

 

したがって、民訴法を得意にすると司法試験に極めて有利です。

民訴法を深めるー高橋・重点講義と判例学習を同時になどで「高橋・重点講義(上) 」「同(下) 」を使った勉強を勧めているのはそのためです。

 

しかし、民訴法はそもそもとっつきにくい科目であり(古くは「眠訴」と揶揄された)、民訴法のとっかかりで躓いてしまっているロー生は極めて多いのも事実です。

実は私も民訴法は最終的には得意科目・得点源になったものの、勉強の初期ではものすごく苦労した1人です。

 

そこで民訴法に躓いてしまった人の勉強法の視点について、以下書いておきます。なお、私自身が試行錯誤したため、少し雑多な視点となっています。したがって、下記が全部必要というわけでなく、自分に有益と思った視点をつまみ食い的に参考にして下さい

1.民法の理解を早急に

民事訴訟は紛争が生じた場合に、民事実体法に従った法的判断を下すための手続なので、民訴法の勉強は、民事実体法、特に民法の理解がある程度深まっていないと理解の入り口にすら立てません。

ロー生は1年生一杯かかって民法の講義を受ける一方、早い学校では1年後期、遅くとも2年前期には民訴法の講義を受けざるを得ないため、民法の理解があまり出来ないままに民訴法を学び、訳がわからず破綻する、というパターンが発生しがちです。

 

したがって、「急がばまわれ」ではありませんが、民訴法で躓いている人は、まずは、民法の勉強に集中したほうがいいと思います。目安はいつものように「択一過去問で6割以上」解けるようになってから、民訴法の勉強に手を付けたほうがいいと思います。

 

2.要件事実論の基礎の基礎を大体知っておく

現在、司法試験受験生の民訴法の基本書シェアNo1は、藤田広美「講義 民事訴訟 第3版 」
だと思います。私も最終的には高橋・重点講義を基本書とすることを勧めますが、同書を最初から基本書に出来る訳はないので、その前の基本書としては藤田・講義 が最適だと思います。

 

同書は要件事実の説明がかなり前半でなされるのが特徴であり、要件事実「で」民訴を学ぶ」というスタンスの基本書と言っていいと思います。藤田・講義を度外視しても、要件事実「で」民訴を学ぶという姿勢・視点は学習の入り口から応用に至るまで極めて重要です。詳しくはリンク先のエントリを参照して下さい。

 

したがって、民法をある程度理解した上で「要件事実『論』の基礎の基礎」を「大体知っておく」ことが、民訴法の勉強を始める上で極めて重要です。

そのために、民訴法の勉強を始める前に岡口基一要件事実マニュアル 第1巻(第4版)総論・民法1 」第1編・総論を読むことを強くお薦めします。なお、要件事実の基礎の基礎を学ぶため、というと岡口基一要件事実入門 」、同「要件事実入門 初級者編を勧める人も多いのですが、私は「入門」はかなり難しく、「初級者編」はちょっと淡白すぎる、というのが感想です。また岡口・マニュアル1・第1編・総論は、民法と民訴法の架け橋的な論述であることが大きな魅力です。

 

ただし、この段階で「要件事実を極めよう」とは思わないことが大事です。要件事実は民法と民訴法をしっかり理解してこそ深く学べるものなので、この段階では「基礎の基礎を大体知っている」程度で満足すべきです。(もちろん要件事実の勉強は地道に続けて下さい)

 

3.民事訴訟のイメージをつかむ

民訴法・刑訴法に共通して言えるのですが、手続法は諸概念をバラバラと読んでも全く理解できません。手続の進行に従って、諸概念やその相互関係を理解することが大事です。

しかし、民事訴訟は1回の期日で終わることは無く(被告欠席→擬制自白パターンは別)、しかも弁論準備手続は非公開であるため傍聴しても中々イメージし辛く、手続きの進行に従って諸概念を理解することに壁を感じるロー生がかなりいます。

 

そのため、木山泰嗣「小説で読む民事訴訟法―基礎からわかる民事訴訟法の手引き 」「小説で読む民事訴訟法〈2〉より深く民事訴訟法を知るために 」を寝転がりながらでいいので、読んでおくことを強くお薦めします。

 

4.最後の手段:林屋礼二「 新民事訴訟法概要第2版

上記のあらゆる手段を使ったところで、どうやっても基本書の内容が頭に入らない、理解できない」というのはママ起こる事態です。試行錯誤した私も結局このタイプだと思います。

私が考える最終手段は、林屋礼二「新民事訴訟法概要第2版」を「とりあえずの」基本書にすることです。

 

最終改訂が2004年であり、現在は有斐閣オンデマンド(10,800円)またはアマゾン等の古本 でしか手に入らない本ですが、民事訴訟法の基礎概念の「基礎」を丁寧かつ簡潔に解説してあり、また、基本の理解に必要な範囲に絞った論点を判例を紹介しつつ解説してあり、極めてわかりやすい基本書です。私は同書以上にわかりやすい民訴法の基本書を知りません。

 

私は同書を何度も読むことはもちろん、引用されている判例はその頁の余白に要旨を書き、百選判例については関係があると思われる頁の余白に要旨を書き込みました。そしてその状態で余白を見ながら何度も通読することで、なんとか民訴法がわかるようになりました。

 

手に入れるのにお金がかかりますが、司法試験における民訴法の重要性と、民訴法で躓いていてしまっている現状を考えると、ケチるべきでない出費なのではと思います。

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