司法修習生Higeb’s blog

68期司法修習生によるブログです。法律の勉強法・基本書・参考書などの司法試験ネタや勉強ネタを中心に書いていきます。

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民訴法を深めるー高橋・重点講義と判例学習を同時に

藤田広美「講義 民事訴訟 第3版 」と岡口基一要件事実マニュアル 第1巻(第4版)総論・民法1 」第1編の併読でそれなりに民訴法が分かるようになると思います。

しかし、これだけで司法試験に合格できるのは一握りのとても優秀な人だけです。また、藤田・講義や岡口・マニュアルを深く理解するためにも、もう一歩踏み出した勉強をした方がいいと思います。
 
そこで読むべきは、高橋宏志重点講義民事訴訟法(上) 第2版補訂版 」「重点講義民事訴訟法(下) 第2版補訂版です。民訴法について非常に深く掘り下げて考察してあります。その問題意識は司法試験でそのまま問われることも多いです。
 
ちなみに、「高橋・重点講義を読む労力は大きい、それを他に向けるべき」という人がいます。しかし、司法試験での民訴法は、独立の科目であると同時に、実体法たる民法の実現手続きであり、会社法でも会社訴訟は民訴手続きであり、行政法でも行政訴訟は行訴法に定めない限り民訴法の例によります(行訴7条)。また、憲法でも、憲法訴訟は行政訴訟民事訴訟として争われることも多いです。更に、手続法同士の比較理解から、刑訴法の理解にも資する面があります。民訴法を基にした要件事実思考は刑法を含む全教科の役に立ちます。そう考えると、民事訴訟法を制する者が司法試験を制す」といってもよく、民訴法には力を入れるべき、少なくとも苦手科目とするべきではないことを強調しておきます。
 
高橋・重点講義を読むに当たっての留意点の第1は、まずは本文のみを通読すべきであることです。本書の愛読者(私もそうでした)には、「(注)を読んでこその重点講義」と言う人がかなりいます。私も、わからなくはありません。しかし、同書の基本制度について、理論だけでなく、実務・判例から生じている問題の捉え方と考え方の筋道を論ずる、というスタイルは本文のみでも十分な範囲をカバーしています。また、(注)まで最初から読むと、ボリューム、知識量、難しさの全てに圧倒されて、挫折する人がかなり多いことにも注意すべきです。
なお、本文には論点ではなく制度の説明もかなり丁寧になされており、私は証拠調べ部分などは、重点講義を読んではじめて理解できました。
 
次に、重点講義の本文を読む際に併せて判例もチェックすることも大事です。他の科目のように、百選等の判例のみに取り組むよりも、重点講義に出てくる判例をその都度チェックしていく方が効率的で理解も早く深まります。民訴法の判例は、当該事案限りの判断自体はわかっても、それが他にどんなバリエーションある事案で問題になるかの想像しにくいためです。つまり、応用の前提としての、類似事案の想定が難しいのです。
高橋・重点講義は判例やその事案についての意識が非常に高い本です。そのため、事案の引用も長く、判例による考慮事項への考察から、高橋説から見た考慮事項の明示や評価を非常に丁寧に説明してあります。そしてそれを踏まえた解釈論やさらに発展させた論点をも解説してあります。これらが、最初に書いた高橋・重点講義の「問題意識」 であり、司法試験の出題に繋がっています。例えば、一部請求で外側説を取るとしても、事案が試験訴訟型か費目限定型かによって、理由付けや考慮要素の検討に差が出るといったことです。
なお、該当箇所の藤田・講義を参照すると、問題が明確にわかることが多いと思います。「基本書と行ったり来たり」することで、基本書(藤田・講義)の理解も重点講義の理解も深まります。
 
なお、留意点の留意点になってしまいますが、判例をチェック際は、必ず訴訟物を特定し攻撃防御・要件事実を頭に入れておきましょう。手続きが問題であっても、それは具体的事件で惹起されているのであり、要件事実と密接に関係していることが多いためです。また、高橋教授は要件事実を前提に解釈論を展開することが多く、重点講義の理解のためにも必要なことです。高橋・重点講義の傍らに岡口基一要件事実マニュアル 第1巻(第4版)総論・民法1 」「要件事実マニュアル 第2巻(第4版)民法2 」を置いておき、一々チェックする癖をつけておきましょう。特に条文から要件事実を抽出するのに慣れていないうちは、さっさと岡口・マニュアルを見ましょう。要件事実論の勉強はまた別途すべきです。
 
次に、(注)をどう読むか?又は読まないか?、言い換えると優先順位が問題になります。
まず、本文でチェック出来なかった百選判例は、巻末の判例索引を使い、記述のある(注)を探して読むのが最優先です。その際に、(注)が付されている本文の箇所を最下層目次単位で読むべきです。百選潰しの一環ですし、百選を扱う(注)は、基本的制度の深い理解に直結するからです。
 
次に、一部請求・弁論主義・既判力・処分権主義については、(注)まで読むこと(=通読すること)をお薦めします。前にも書きましたが、民訴法の理解は「既判力に始まり既判力に終わる」といっても過言ではありません。上記項目はその既判力とそれを支える、民訴法の基礎概念の丁寧かつ深い記述です。私は本試験直前の民訴法の見直しは上記を読むことだけでした。
 
他の項目の(注)を全て読む(=当該項目を通読する)かは、民訴法が苦手か?(苦手項目は読む、特に複雑訴訟関係や上訴関係)、民訴法を得意にしたいか?(全部読む)等、個人の事情によると思います。私は、全て読み、結果として民訴法は得意科目になりました。
 
しかし、高橋・重点講義の活用は上記にとどまりません。演習の第1段階で、高橋・重点講義、藤田・講義、岡口・マニュアルを参照しまくることになります。演習の重要性は民訴法でも他と異なることはありません
それについてはまた、別に書くつもりです。






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