司法修習生Higeb’s blog

68期司法修習生によるブログです。法律の勉強法・基本書・参考書などの司法試験ネタや勉強ネタを中心に書いていきます。

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芦部にプラスする基本書(基本書・副読本・参考書)

憲法の勉強の第1歩−芦部「憲法」を大事にしよう!(基本書) - 司法修習生Higeb’s blogで書いた通り憲法の勉強は、芦部信喜著・高橋和之補訂「憲法 第五版」をしっかり読み込むことが、大前提です。

しかし、芦部・憲法を読み込んだだけで司法試験の憲法の答案が書けるようになることは、ほとんどないと思います。
司法試験型の憲法問題の答案を書けるようになるための方法はいくつかあります。私は、近年学会でも司法試験受験界でも注目されている、いわゆる3段階審査論を答案の基本に据えていました。

3段階審査論と言えば、小山剛「「憲法上の権利」の作法 新版」を使う人が多いと思います。3段階審査論のエッセンスがコンパクトにまとまっており、判例の考え方を丁寧に読み解いてあります。読むと合憲性判断のプロセスが明快にわかり、憲法の答案のイメージが具体化します。現在、法学セミナーで「憲法上の権利 各論」が連載されており、人権類型毎の学習も可能になって、益々有益な本になりました。
ただ、好みの範疇かもしれませんが、通説である芦部説へのスタンスがわかりにくく、恐らくはかなり距離があることに注意すべきです。別に芦部説を書く書かないかは合否に関係はありません。ただ、多くの判例評論、演習書等はもちろん、司法試験問題も芦部説をかなり意識して作られており、学習の便宜として親芦部の方が勉強しやすい人もいると思います。
また、これも芦部説との距離に関係しますが、正当化論証がやや分かりにくいのも、注意すべき点です。

私がおすすめするのは、駒村圭吾憲法訴訟の現代的転回: 憲法的論証を求めて」です。やはり3段階審査論を展開する本ですが、「作法」に比べてかなり厚い記述となっています。3段階審査の基本枠組みはもちろん、保護範囲論証と制限論証の順番の解説など、3段階審査論を理解する助けになる記述も豊富です。
また、芦部説を明示的に意識しており、それを取り入れる部分と反対する部分を、それぞれ3段階審査論の基礎から説き起こして説明してあります。特に正当化論証における芦部説へのアプローチは、司法試験の答案に応用しやすい説明になっています。
また、本全体を通して「猿払事件判決を乗り越える」ことを目指しており、そのため判例への言及も豊富です。

注意すべきは、上記の「作法」「現代的転回」は単に通読しても力が付かないことです。①「作法」又は「現代的転回」と②芦部・憲法、③判例集を、「行ったり来たり」しながら、読み、答案を書くことで憲法判断がわかってきます。「作法」、「現代的転回」を片手に芦部・憲法判例を読み込んでいく、というイメージです。

憲法を苦手にしている受験生はとても多いと思います。それだけに、得意とは言わないまでも、「外さない」科目にしておくと、受験上非常に有利なので、力のかけ甲斐があると思います。


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