司法修習生Higeb’s blog

68期司法修習生によるブログです。法律の勉強法・基本書・参考書などの司法試験ネタや勉強ネタを中心に書いていきます。

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不法行為法を学ぶ(基本書・参考書)

不法行為はそれ自体が出題されることが多い上に、抵当権侵害、売買契約に基づく目的物引渡訴訟の代償請求など他の分野でも顔を出します。

不法行為を学ぶ上で留意すべき第1は、要件事実が分かりにくいことです。言い換えると、1つの事実が複数の要件に該当するため、何を論じているのか分かりにくいということです。例えば、交通事故で「車が歩行者に接触した」という事実は、被侵害利益の存在、侵害の事実、両者の因果関係に該当し、場合によっては過失も基礎づけます。これを要件ごとに論ずるのは書きにくく、何かしらの視点・工夫が必要になります。

第2に、当事者間の関係が比較的単純なので、事例を思い浮かべやすく学びやすいことにも留意すべきです。基本的に権利を侵害した者と侵害された者の2者の関係であり、契約のような法的バリエーションがある訳でもありません。したがって、不法行為「のみ」を考えればあまり多くの時間を割く必要はありません。他方で、過失・損害・因果関係等の概念は、「損害賠償法」として債権総論の債務不履行責任と共通します。債権総論が難解で盛りだくさんなことを考えれば、それらは不法行為で学んでおくことも一考に値します。

留意すべき第3は、他の分野にも増して、学説をバカにしないようにしましょう。例えば、判例は、損害論で差額説を採った上で、因果関係論で416条を類推適用する相当因果関係説である、ということを覚えてもあまり意味がありません。判例は多様な考慮を多様な事実を前提に判断しています。その際に、損害=事実説、保護範囲説等の学説は理解を助けるのに極めて有益です。

基本書としては、簡潔かつ要件事実的な類型を学ぶならば、山崎敏彦「債権法各論講義―要件事実論的アプローチ 」を薦めます(なお、同書記載の判例は、適宜参考にし、基本書として読むときは本文のみを読めば、かなりコンパクトです。)この本に書いてある知識・枠組みを判例を読むとき、問題を解くときに意識して考え、復習すればかなりの力がつきます。

損害賠償法として学ぶ場合には、潮見佳男「基本講義 債権各論〈2〉不法行為法 (ライブラリ法学基本講義) 」を薦めます。「基本」との書名ですが、不法行為の諸概念を丁寧に説明し、学説の視点からの判例分析がなされています。私もこの本が勉強の中心でしたが、詳細ながら分かりやすい解説だったので、不法行為債務不履行について、かなり応用力が付いたと思います。




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