司法修習生Higeb’s blog

68期司法修習生によるブログです。法律の勉強法・基本書・参考書などの司法試験ネタや勉強ネタを中心に書いていきます。

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刑法の基本書の選び方(基本書・副読本・参考書)

司法試験における学説の効用でも述べた通り、学説を学ぶことの重要性は刑法にも当てはまります。また、判例・学説がことなっても論理の8割り以上が同じで、同じ部分と異なる部分を意識することが重要なことも同じです。

 
しかし、刑法の行為無価値と結果無価値については、少なくとも初学者がある程度勉強が進むまで(短答問題を8割り以上解けるくらい)は、自分と異なる立場の本を読まない方がいいと思います。
行為無価値と結果無価値とでは、構成要件的の故意の概念の要否、違法性の位置付けなど、刑法の基本である「犯罪とは、構成要件に該当し、違法で、有責な、行為である」という定式について見解の相違があり、混ぜると理解できなくなる可能性が高いからです。
 
行為無価値では、井田良「入門刑法学・総論 」「入門刑法学・各論 (法学教室ライブラリィ) 」「講義刑法学・総論 」や高橋則夫「刑法総論 」「刑法各論 」が、学説・判例が分かりやすく、行為無価値の「通説」を学べるので適当だと思います。
 
結果無価値では、存命の第一人者による著書で理論的に精緻で一貫する、山口厚刑法総論 第2版 」「刑法各論 第2版 」、若手のホープの共著で分かりやすい、今井・小林・島田・橋爪「刑法総論 第2版 (LEGAL QUEST) 」「刑法各論 第2版 (LEGAL QUEST) 」、著者が急逝したため改訂が見込めないものの分かりやすさと手堅い記述に定評がある西田典之刑法総論 第2版 」「刑法各論 第6版 」等が有力な選択肢です。
 
選び方で重要な点は、第1に、総論と各論は同じ著者であることです。刑法は冒頭で結果無価値と行為無価値について述べた通り、一貫した立場•理論で頭の中に枠組みを作ることが大事です。特に違法性の位置付けや故意の体系的地位など、総論の議論が各論に直結する論点は多いので、少なくとも短答を8割以上正解するくらいの実力がつくまでは、総論と各論を同じ著者で揃えるべきです。
もちろん、基本書が薄いために他の立場が似ている人の詳しい本で補うことは必要ですし、違いを意識して読めば問題はありません。
 
第2に、裁判所職員総合研修所監修「刑法総論講義案(三訂補訂版) 」(いわゆる、書記官研修本)は論外です。某予備校が、旧試験の基本書として勧めていたため、受験生に一定の支持者があります。しかし、書記官の執務に必要な限りの説明をするのが目的の本で、理論的な一貫性はありません。いわゆる「行為無価値チャンポン説」であり、司法試験の「答案」という一種の「論文」を書く力を付けることには全く役に立ちません。各論がない点でも役に立ちません。
 
以上を踏まえて、個人的には、
行為無価値ならば、井田先生の本をお勧めします。但し、各論は入門しかなく薄いので、高橋先生の本で補う必要があります。
 
結果無価値ならば、敢えて西田先生の本を強くお勧めします。基本から説き起こし、積み上げていくような論理展開は非常に分かりやすく、また判例をとても強く意識しながら結論の妥当性をしっかりと論じてあるので、判例の深い理解にもつながります。また、特に各論は実務での評価が高く、構成要件から思考を始める、という思考の癖がつきます。ただ、司法試験で確実に点が入る罪数論が薄く、また、残念ながら急逝されたため、今後の改訂が見込めません。そこをリーガルクエストで補う必要があります。
 
 
 
 






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