司法修習生Higeb’s blog

68期司法修習生によるブログです。法律の勉強法・基本書・参考書などの司法試験ネタや勉強ネタを中心に書いていきます。

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物権法(担物を除く)を学ぶ(基本書・参考書)

物権法は比較的範囲が狭く、論点も少ないため、ものすごく苦手、という人は少ないと思います。
しかし、司法試験に目を向けると、物権法理が正面から問われることが多く(ex.H24民法)、重要性の高い分野です。また、要件事実について問われることも多い点も見逃すべきではありません(ex.H26民法)。

物権法の勉強で留意すべき第1は、物権の排他性と債権の相対性をしっかり理解することです。物権と債権の峻別はその例外の理解を含めて、民法全体の理解の要です。そして、民法が苦手な人の多くが、物権の排他性の理解が甘いために債権の理解までが怪しくなっています。一物一権主義の説明を何となく読み流すようなことが無いように気を付けなければならないと思います。

留意すべき第2は、繰り返しになりますが要件事実論が極めて大事です。例えば、背信的悪意の法理はどの場面で問題になるか?物権的請求権に対してどのような対応があるか?等、要件事実論を考えてはじめてちゃんと理解できることが非常に多いと思います。また、司法試験では物権の要件事実そのものが問われることもあり、典型的な攻撃防御は暗記するくらいにしっかり身に付けなければならないと思います。

物権の基本書は、まず、佐久間毅「民法の基礎〈2〉物権」が、最も適当だと思います。判例・通説の深い理解ができること、要件事実・証明責任への配慮もなされていることなど、司法試験受験生にとって非常に有益です。
但し、読み込みの際に大島眞一「完全講義 民事裁判実務の基礎〈上巻〉(特に第9講、10講)を随時参照して、要件事実の観点から佐久間・物権の記述の意味を考えるようにしましょう。これによって、理解も答案への応用力も飛躍的に高まります。
なお、かなり高度な本であることは総則と同様なので、初学者や民法が苦手な人は、本田ほか「ハイブリッド民法 (2) 物権・担保物権法」でしっかり基礎固めをした上で、佐久間・物権に取り組みましょう。

佐久間先生の本が合わない人は河上正二「物権法講義 (法セミLAW CLASSシリーズ)を使うことをおすすめします。オーソドックスなスタイルの基本書です。参考文献へのアクセスが良いのも特長です。大島・民事裁判を並行して読む必要性の高さは上記と同じです。

わからないときには、我妻榮「民法案内3 物権法 上」「民法案内4 物権法 下」を参照しましょう。やさしく詳しく説明されています。

勉強に行き詰まったときには、物権の排他性から物権変動を説き起こし、債権の相対性と対比させて民法全体の深い理解に有益な、加藤雅信「物権法 (新民法大系)」を開くのも一考です。私はこのシリーズを読むことで民法を深く考えることができるようになりました。特に物権法は民法全体の理解に有益です。但し、独自説爆発の本ですので、深入りするのは合格後にしましょう。


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