司法修習生Higeb’s blog

68期司法修習生によるブログです。法律の勉強法・基本書・参考書などの司法試験ネタや勉強ネタを中心に書いていきます。

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担保物権法を学ぶ(基本書・参考書)

担保物権は債権と物権の交叉領域であり、債権を「担保する」ということが初学者には分かりにくい分野です。ただ、そこを乗りきると基本的な仕組み自体はそれほど難しい訳ではありません。最初の取っつきにくさにめげずに勉強すればある程度の理解には到達しやすいと思います。

ただ、問題はここからです。担保物権は金融実務での執行逃れに対して判例が対応するなどのため、論点数がかなり多い上、一つ一つの論点が難解です。答案で論点をきちんと論じて、規範を定立し事実を当てはめるためにはかなりの勉強が必要です。

基本書は、取っつきにくさを乗り越え、ある程度の理解に手早く到達するには、松井宏興「担保物権法 (民法講義 3) 」が適しています。松井「債権総論 (民法講義) 」と同様、ボリュームは抑え目ながら、制度を一つ一つ、基礎からきちんと説明してあります。また、「担保する」ということはどういうことかもイメージしやすい記述です。初学者や担物が苦手な人はまずこの本を何回も読みましょう。

しかし、残念ながら同書だけでは本試験の答案は書けません担保物権は上述の通り実務上問題点がどんどん生じる分野なので、司法試験でも論点に入り込んだ検討をしないと、事案の解析も処理もできない問題が出題されるためです。すなわち、同書より高度で、実務家が「標準的なテキスト」を読み込む必要があります。

実務家に従来から定評があるのが、高木多喜男「担保物権法 (有斐閣法学叢書)です。伝統的な解釈を基本としつつ、現代的課題にも対応する手堅い解釈論が展開されています。様々な論文・判例批評で引用される、まさにスタンダードテキストです。

近年非常に評価が高いのが、道垣内弘人「担保物権法 第3版 (現代民法 3)です。道垣内教授は現在担保物権法のトップランナーであり、金融実務への目配り、判例の鋭く深い考察と再定式化など、非常に理論的でかつ実務的な本です。一部の受験生が「俺様説が強い」として、敬遠していますが、同書の見解は判例を踏まえ、分析した先にあるものであり、道垣内説を理解することは、判例とその射程を理解することと同義であり敬遠する理由にはなりません。

但し、両書ともしばらく改訂されておらず、新しい判例は別途チェックする必要があります。

どちらかの本を読み込むと同時に判例を百選プラスα読むことが、担保物権の力をつける王道です。







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