司法修習生Higeb’s blog

68期司法修習生によるブログです。法律の勉強法・基本書・参考書などの司法試験ネタや勉強ネタを中心に書いていきます。

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酒巻・新連載とあわせて読むべき本(基本書・参考書)

酒巻・新連載で学ぶ刑訴法(基本書) - 司法修習生Higeb’s blogで紹介した通り、刑事訴訟法の基本書は、酒巻匡「刑事手続法を学ぶ」(法学教室連載)を最も薦めます。


しかし、酒巻・新連載は判断枠組みの提示に力が入れられており、解釈論自体は比較的あっさりとした記述です。そこで、答案を書くために応用力が付く本を読むことが必要です。そのために、もう少し突っ込んだ考察を学ぶために是非とも読むべき本が、佐々木・猪股「捜査法演習 理論と実務の架橋のための15講 」、廣瀬健二編「刑事公判法演習: 理論と実務の架橋のための15講の2書です。

捜査法演習は検事2名による共著書で、比較的長文の設例を解説する形で、捜査実務に即した法解釈とあてはめが展開されています。特筆すべきは解釈論が徹底的に条文から説き起こされている点です。自説がどうあろうと、法解釈の出発点はあくまで条文であり、事実認定・あてはめも条文の要件を目指してなされることの重要性はいくら強調しても強調しすぎることはありません。
また、判例も条文からの説き起こしで解説されている点も非常に勉強になります。刑訴法は「判例が大事」「判例を少しアレンジした事案が司法試験に出る」という風説が強いせいか、判例を孤立的に(理解というより)暗記している人が非常に多いです。判例もあくまで条文の要件の明確化とその具体的事案におけるあてはめです。条文と切り離した判例の「理解」はあり得ませんし、条文と関係なく暗記しても「あてはめ」ることは不可能です。

刑事公判法演習は、刑事裁判官の共著で、短めの設例を解説する形で法解釈と(軽い)あてはめが展開されています。特筆すべきは、公判審理とその結果たる判決全体を意識して、個々の制度・論点の深い考察がなせれていることです。公判法は伝聞法則・訴因変更・一事不再等、個々の論点の難しさに気をとられ、そもそも何のための議論かわからなくなることが多い分野です。ゴールが不明確なまま個々の論点をいくら勉強しても、「わかったつもり」以上にはならず、公判法(司法試験の設問2)の点数が悲劇的なことになります。

上記2書共に、本来は演習書であり、答案練習に使うことももちろんできます。しかし、内容は答案解説を遥かに越えた深さです。また、設例解説方式はあてはめを含む本試験の実戦に即した記述法です。酒巻・新連載と併せて、基本書として読み込むことを強くお薦めします。


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