司法修習生Higeb’s blog

68期司法修習生によるブログです。法律の勉強法・基本書・参考書などの司法試験ネタや勉強ネタを中心に書いていきます。

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民法判例の学び方(判例集・参考書)

民法判例を学びやすい科目です。理由は、岡口基一要件事実マニュアル 第1巻(第4版)総論・民法1 」「要件事実マニュアル 第2巻(第4版)民法2 」を利用できるからといっても過言ではありません。判例学習の際は、岡口・マニュアルを傍らに置き、気になったらすぐチェックする癖をつけておきましょう。

 
民法判例に取り組む際は、まず、事案の概要を読んで、訴訟物は何か?言い換えると請求の根拠条文を特定することが大事です。この点が疎かな人が非常に多いです。例えば、94条2項類推の判例では、論点が抗弁や再抗弁に関するものなので、そこにばかり目が行き、訴訟物や請求原因を見落としがちです。訴訟物や請求原因を確定するのは、要件事実の学習やあてはめの訓練のためだけではありません。当該論点がどのような紛争の、どのような場面で問題になるかを学習するためです。
法律は事案を処理するためにあるので、この点の理解が甘いことは、実は当該論点についてなにもわかっていないのと同じことになります。

更に言えば、本試験で訴訟物=根拠条文を間違えると、原則0点になってしまうことも軽視すべきではありません。判例を読むときに訴訟物を意識していると、訴訟物を間違えない訓練になります。訴訟物を間違えないための留意点はまた別に書くつもりです。
 
その後に同じように、抗弁、再抗弁…と続く攻撃防御を考えます。この際、短時間でいいので、条文だけを頼りに自力で攻撃防御や要件事実を考えてみてください。要件事実は民法全体(民事法全体や、司法試験にあっては「要件事実的思考」として全科目に及びます)にわたって問題になります。したがって、全ての要件事実を把握することは不可能です。「知らないことは書けない」では、司法試験には合格できません。要件事実「論」の学習で会得した知識で、条文から自力で要件事実を抽出する訓練が必要です。民法判例学習は、典型的な紛争で要件事実へのあてはめもしてあるので、その訓練には好適です。

その後、必ず岡口・マニュアルで攻撃防御と要件事実をチェックしましょう。この繰り返しで要件事実を通じて民法が、更には要件事実思考を通じて法律科目全体が得意になっていきます。
 
次に、判旨がどの要件事実についての判断かを特定します。この作業は非常に大事です。「知識はあるのに試験の成績が悪い」人のほとんどが、論点を抽象的に把握し、どの要件事実(条文文言)についての争いかがわかっていません。どの要件事実にどのような問題があり、判例はどのような論理で、どのような規範を立てたか、を具体的に把握しなければ、事案の処理は出来ません。解釈や規範を学ぶ以前に、「何が問題か?」がわかっていることがとても大事です。
 
問題となる要件がわかり、それについての判旨の論理や規範をひとまず把握したら、改めて事案の概要を読んで、要件事実の一つ一つについて、具体的事実をあてはめていきましょう。つまり、判旨、判文から主要事実を確認するのです。間接事実による認定の場合は、事実の評価=その間説事実がなぜ主要事実を推認させるか?についても判旨、判文から確認します。
この作業が極めて大事です。判例学習の目的は論点勉強ではなく、論点が絡む具体的事案の処理を学ぶことだからです。しかし、これをしない人が非常に多く、勿体ないというか、判例学習の意味がなくなっています。論点を学ぶなら要旨を暗記するだけで済みます。
判例学習は演習に限りなく近いことをしっかり認識しましょう。


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