司法修習生Higeb’s blog

68期司法修習生によるブログです。法律の勉強法・基本書・参考書などの司法試験ネタや勉強ネタを中心に書いていきます。

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「要件事実重視」-優秀でない人の戦略

このブログでは、民法会社法だけでなく、憲法行政法についても、個別法の要件事実を考え、事実をあてはめることを繰り返し薦めています。また、民事訴訟法については、民訴法そのものの要件事実はもちろん、民法等の要件事実を「使って」民訴法を理解することを薦めています。更に、刑法・刑事訴訟法でも、「要件事実思考」として、要件を確定して、主要事実・間接事実をあてはめることを薦めています。

このように非常に要件事実を重視する理由は、一言で言うと「優秀ではない人が、確実に合格するため」です。私自身が、ロー時代(今もですが)、全く優秀では無く、理解は遅く、要領も悪いタイプでした。
要件事実を「使う」ことで、法律を「地味だが着実に」理解し、「泥臭いが手堅い」答案を書けるようになる、と私は考えています。
以下に、理由や効用・留意点を書きます。

第1に、「法的三段論法」を身に付けることは、法律の理解(読む勉強)にも答案(書く勉強)にも極めて重要です。条文よ要件を特定し→論点があるなら論じて規範を定立し→事実をあてはめる(間接事実なら評価・推認する)という流れは、要件事実を考えて事実をあてはめることの繰り返しで身に付きます。論点についての論述も要件事実思考が出来れば、自ずと法的三段論法に則ります。

第2に、要件事実を考えることで、制度の基本的仕組みや趣旨を理解することが容易になる点も重要です。どんな制度か?の理解は、どのような場面で問題になるのか?という点の理解が前提です。場面とは具体的には、要件事実に該当する事実がある場面、ということです。また、当事者のどちらが何を主張・立証すべきか=要件事実は誰のどのような利益保護が制度の趣旨かという思考の結果なので、逆に要件事実をチェックすることで、制度趣旨の理解が容易になります
制度の基本的仕組みと趣旨の理解は、意外と出来ていない人が多いのですが、非常に応用範囲が広く、大切なことです。

第3に、判例をきちんと読むことができることも大きな利点です。「判例は事案を含めて理解する」ことを強調する人は、かなり多いと思います。しかし、これが曲者で、事案の概要を読んでも、判旨とのつながりがわからず、他方、一審判決を読むと膨大な主張と事実認定を咀嚼できず、混乱する、というような人が大半なのではないでしょうか?訴訟物を考え、論点を含めて要件事実を確認して、事実をあてはめる作業を地道にすれば、さほどの能力もコツも必要無く、事案を含めて判例を理解することができます

第4に、論点の位置づけが明快にわかります。繰り返し書いていますが、どの要件についての論点かがわかっていないと、意味がありません。また、要件事実を踏まえると学説分岐の意味がわかり、深い考察が可能となります。学説の論理がどこまでが同じで、分岐の理由は何か=
誰のどのような利益を保護しようとしているかがわかりやすくなるからです。学説の暗記は無意味・有害ですが、上記の思考をすることは、出題趣旨等で強調される「本件事案の特殊性」に応じた答案を書けるようになります。

第5に、事実を落とさなくなります。答案で拾うべき事実を拾えないことに悩む受験生は多いと思います。そして、その原因を「読み落とした」「気づかなかった」と分析し、「気をつけて解く」等の曖昧な精神論で解決しようとする人がかなりいます。しかし、事実を落とす最大の原因は、それをあてはめるべき要件事実を意識していないからです。受け皿となる要件事実がわかっていれば、問題文を読む(思い出す)過程で、1つ1つあてはめを行うことができるので、事実を落とす可能性がかなり低くなります。

要件事実を使って勉強することは、面倒です。そこまでやる必要はない、効率が悪い、と感じる人もかなりいると思います。
前述のように、要件事実を意識しなくてもしっかり理解でき、きれいな答案を書ける優秀な人もいます。
しかし、優秀でなく、理解にも答案作成にも苦労する人は、要件事実をツールにして、地道に着実に勉強すべき、というのが私の考えです。そうすれば、私がそうであったように、優秀でなくとも合格することは可能です。
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