「読んでもらえる字」を書く方法
「筆力」を鍛える有用性と即効性 - 司法修習生Higeb’s blogで、筆力をつける=速く書くことが出来れば、司法試験に非常に有利と書きました。
第1に、きれいな字を書く、ですが、字が書けるようになってから20年以上かけて悪筆になったのですから、ロー生の間に字が全体的にうまくなることはあり得ません。また、気分転換になるなら別ですが、習字を習う時間もありません。したがって、練習する字について選択と集中が必要です。
その観点で1番有益なのは、定期試験を採点した教官から「この字は読めない」と指摘された字を練習することです。定期試験の答案という、法律の答案で、時間制限がある中で書いたものなので、そこで読めない字は本試験でも読めない可能性が高いからです。
添削済みの答案に赤字で「?」が付いていたり、返却の際に「読めない」と言われたりする字です。それらがなければ、教員に「読めなかった字はないですか?」と聞くといいと思います。その程度の図々しさならば、笑って答えてくれる教員が多いのではないでしょうか。
次に有益なのが、ゼミ等で答案を交換した勉強仲間に指摘された字を練習することです。時間制限があったとは必ずしも言えませんが、法律の答案を見た人が「読みにくい」と指摘した字は、試験委員は読めない可能性が高いからです。また、「読みにくい字はなかった?」と聞くハードルも教員に対するよりは低いと思います。
次に有益なのが、家族や恋人に答案を見てもらい「読みにくい」と言われた字を練習することです。長い時間を一緒に過ごしている(or過ごしていた)人が読みにくい字を、試験委員が読めるはずはないからです。また、遠慮会釈なく意見してもらえるメリットも大きいと思います。
不思議なことにというか、当然といえば当然なことに、上記3者に「読めない」と指摘される字は共通することが多いと思います。私の場合、ひらがなでは「て」「へ」「ら」を共通して指摘されました(漢字はもっと多い)。それらを集中して練習することは非常に効果的です。
第2に、汚くても「読んでもらえる字を 」を書く、ですが、字をきれいに書くよりは即効性がある方法がいくつかあります。
まず、大きな字を書くことが効果的です。汚ない字の読みにくさは、字が小さいことでかなり増幅されます。小さくて汚ない字は読みにくいことこの上ない、というか読めません。大きな字は判別しやすいので、汚くても読んでもらえる可能性が高いのです。
本試験で訂正・挿入処理をするための余白を空けるため、又は、筆力がすごくある人が8枚で足りなくならないようにするために字を小さく書くべき、という人がいます。試験戦略としてはわかるのですが、読んでもらえなければ0点ということを考慮に入れて判断すべきです。
次に、字そのものからは離れますが、形式を重視することも効果的です。答案の形式については、木山泰嗣「センスのよい法律文章の書き方 」読んだ方がいいと思います。主なものを挙げれば、ナンバリングして小見出しを付ける、階層が下がったらほんの少しでも字下げする、1段落があまり長くならないようにする、等をすることで、字そのものも読みやすくなります。形式が整った文章は、先の展開が予想しやすいからです。
更に、これも形式ですが、必要以上に漢字を使わないことも効果的です。いわゆる「白い文」にするのです。
法律用語以外は公用文以上に漢字を使わない方がいいと思います。ひらがなの方が汚くても何とか読めるからです。
そもそも、判決自体が公用文ルールで書かれており、受験生がわざわざ公用文以上に漢字を使う必要はありません。このブログでは「したがって」について、「従って」と「したがって」が混在しています。しかし、答案では「したがって」と書いた方がいいと思います。
法律用語については、条文にある漢字は必ず使わなければなりません。条文にない法律用語について、私がローで習った著名な実務家教員が、「『出捐』を『出えん』と書いたら、『こいつ、勉強してないな』と思われる」と授業で話したことがあります。その点を合格後に話したところ「読んでもらえないよりは、バカにされる方がまし」ということになりました。
読んでもらえなければ0点ということを肝に銘じましょう。
字の練習は、筆力を付ける以上に法律の勉強から遠く、軽視し、バカにしがちです。また、私がそうであったように、字が汚ないことに開き直ったり、今さら努力したくない人が多いです。しかし、司法試験受験戦略からは間違いです。
繰り返しますが、試験委員に読んでもらえなければ、合格出来ません。選択して練習することは、悪筆の人にとっては司法試験合格に直結します