司法修習生Higeb’s blog

68期司法修習生によるブログです。法律の勉強法・基本書・参考書などの司法試験ネタや勉強ネタを中心に書いていきます。

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刑訴法の判例を学ぶ(参考書・判例集)

刑訴法は、①判例の積み重ねにより法理が形成されていること、②出題が膨大な間接事実を認定•評価して、要件該当性を判断させるものが多く、判例の事案処理が前提とされていること等から、判例学習が大事です。但し、「判例の事案がそのまま出る」という人がいますが、それは間違いです。判例の射程内か?判例のあてはめとどこが異なるか?が真の出題意図であることが多いので、その点には注意しましょう。

まず、基本書(私が薦める、酒巻•新連載も)からして、判例の事案と判断枠組み、あてはめを非常に意識して書かれています。一方で量的な問題から事案•判旨を全部は引用している訳でなく、理解が難しいこともあります。従って、百選判例については、基本書の最初の通読(基本書の読み方−その1・最初の3回通読 - 司法修習生Higeb’s blogで書いた通り3回)と並行して要旨を暗記した方が理解が早まります。択一対策にもなるので、頑張りたいところです。

次に判例学習に取り組む際には、是非とも渡辺咲子「判例講義 刑事訴訟法」をまず読むことを強くお薦めします。 同本は刑訴法の基本判例を事案を説明した上で、判決本文に従い、順に読んでいくスタイルです。本文引用の間に、判決文が意味する法理•規範•事実評価を解説してあります。その際には問題の所在や背景を条文を重視して明示してあり、わかりやすく、かつ、基本書と判例学習の橋渡しが可能です。判例の読み方と刑訴法の内容の両方を有機的に理解できる、極めて有益な本です。いわゆる判例批評本ではなく、正に「判例学習書」です。

渡辺•判例講義は掲載数が少ないため、百選等を使用した学習も必須です。学習方法は、他教科と同じく、事案の概要をしっかり把握して、要件に1つ1つあてはめる、その際に論点があれば判旨を要件と結びつけて理解する、ことが大事です。
刑訴法で特に気をつけることは、判例の規範•枠組みをしっかり意識して、当該判例が個々の事実をどのように評価してあてはめているかを確認することです。刑訴法の司法試験出題は膨大な間接事実の認定•整理•評価•あてはめ、が要求されるからです。
また、その際に、基本書の規範が判例と異なる場合には、基本書規範では各事実がどのように評価•あてはめされるべきかを考えましょう。本試験で判例の規範がそのまま使えるとは限らないので、多様な規範と評価•あてはめの訓練のためです。
更に、判例には規範が明示されていない場合には、基本書で他判例や著者の規範をチェックして評価•あてはめを考えましょう。判例は種々の事情を総合考慮し、個々の判断を下し、その積み重ねで一定の判例理論がわかることがあります(中野ほか「判例とその読み方 」参照)。しかし、受験生が答案で規範もなしに「総合考慮」してはいけません。裁判官と受験生では学識が違いすぎます。受験生は何らかの規範なしには事実評価は無理です。基本書には著者が考える判例理論、又は、著者自身の規範が書いてあります。事案をそれにあてはめることで、答案の基礎としましょう。



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