司法修習生Higeb’s blog

68期司法修習生によるブログです。法律の勉強法・基本書・参考書などの司法試験ネタや勉強ネタを中心に書いていきます。

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行政法過去問に取り組む-演習の第1歩

行政法の演習で身に付けるべきは、①個別法を読み解き、②原告の希望を実現できる訴訟類型を選択し、③個別法の解釈を行訴法の解釈に反映させて訴訟要件を判断し、④実体問題を個別法に従い判断することで、⑤②以降の全過程で事実の認定・整理・評価が問題になります。

このすべてを早期に身に付けるとともに、その後の勉強の土台とするには、演習は過去問から始めることをお勧めします。質量共に本試験問題に匹敵する市販の問題集が残念ながら無いからです。

取り組み方ですが、兎にも角にも限られた時間内に個別法の解釈が出来るようになることが必達の目標です。
そのための手法が「可視化」であり、「樹形図」の作成です。

まず、問題文を事案・設問共に読みましょう。
その上で、末尾に付されている個別法を読んで樹形図を作っていきます。

まず、第1条所定の趣旨目的を細分化して、項目化します。個別法の各条文を趣旨目的の具現化として整理するためです。

次に、規制要件規定を特定します。この際、①どの趣旨を②どのように具現化しているか?を必ず考えます。こうすることによって、原告適格の保護利益や裁量判断の他事考慮を基礎づける事実の判断枠組み等が頭の中に出来ていきます。

そして、法の要件を具体化したり、手続きを定めた政令・省令を対象となる要件に樹形図として書きます。この際、法の条文から分岐させるのではなく、できる限り要件から分岐させましょう。樹形図に添付書類等がわかるように略語を書き込んでおきます。
この作業により、政省令を法の趣旨から理解できるようになると共に、逆に概括的な法の要件が核心としては何を保護しているかがわかります。例えば、周辺1000メートル以内の地図の添付が要求されていれば、同区域内の環境が具体的な保護利益ですし、特に学校の記載が求められていれば、児童の安全等の文教利益が保護されていると判断できます。ここから原告適格・裁量・法に反しない限りの例外の許容性等、幅広い判断が出来ます。

また、要件該当した場合の、処分等の効果をしっかり確認します。処分性の判断に必要なだけでなく、下位法令や関連法との関係を考える上で非常に重要です。
この際に、罰則などの担保規定も確認します。どのように担保されているか?は、そもそもの処分等の効果や保護利益の特定に非常に役に立ちます。

更に、政・省令の細目を定めた規則等の通達も当該政省令から分岐させて樹形図として書きます。この際、必ず政省令から分岐させましょう。法の要件→政省令→通達という階層構造に従って、目的が限定・細目化され、逆方向で法の要件の核心が絞られていくことが意識できます。

次に関連法が問題になります。樹形図は必ず、問題となる処分の根拠法で作り、関連法はその中に埋め込んでいくのが原則です。
その際にはまず、関連法の趣旨目的規定を読み、処分根拠法との「重なり」を確認します
次に各条文について、効果と保護利益の観点から、処分根拠法・政省令の要件にぶら下げます。

上記のような樹形図を書くと(書き終わるとすぐに)、設問の答えはほぼ出ていることに気付くと思います。
効果や担保規定から訴訟類型は自ずと決まり、訴訟要件で考慮すべき要素は個別法からわかっており、そうすると問題文から抽出すべき事実も明確にわかります。
行政実体法についても、要件の検討をしてあるので、枠組みは明確であり、受け皿がしっかりしているので、事実も比較的容易に漏れなく拾えます。

私は本番で行政法の答案構成には40分かかりましたが、その内25分が樹形図作りでした。それだけの価値と効果がある作業だと思います。

なお、書いた後の復習の際は基本書の行政法総論部分をしっかりとチェックしましょう。個別法の解釈・樹形図作りは行政法総論の知識・理論を「使って」する作業であることがわかると思います。
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